東京地方裁判所 平成9年(ワ)11928号 判決 1998年9月01日
原告(反訴被告)
清水治
被告(反訴原告)
練馬交通株式会社
主文
一 被告は原告に対して、金四六万四九〇九円及びこれに対する平成八年三月九日から支払い済みまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。
二 原告(反訴被告)は、被告(反訴原告)に対して、金三六万〇三四五円及びこれに対する平成八年三月九日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払をせよ。
三 原告・被告(反訴原告)のその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用は、これを一〇分し、その六を被告の、その四を原告の負担とする。
五 この判決は第一、二項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一当事者の申立
一 原告
1 被告は原告に対し、金一一二万三〇九八円及びこれに対する平成八年三月九日から支払い済みまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決及び仮執行宣言の判決を求めた。
二 被告(反訴原告)
1 原告(反訴被告)は、被告(反訴原告)に対し、金一四三万六一六八円及び内金一三〇万六一六八円に対する平成八年三月九日から支払い済みまで年五分の割合による金員の支払いをせよ。
2 訴訟費用は原告(反訴被告)の負担とする。
との判決及び仮執行宣言の判決を求めた。
第二事案の概要
一 本件は、交差点を直進していた自動車と右折しようとしていた自動車が衝突し、それぞれの自動車の運転手ないし所有者が、その事故による損害賠償を訴求したものである。
なお、立証は、記録中の証拠関係目録記載のとおりであるからこれを引用する。
二 争いのない事実等
次のとおりの交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
1 日時 平成八年三月九日午前一時三〇分頃
2 場所 東京都千代田区霞が関一丁目三番先交差点(以下、「本件事故現場」という。)
3 当事者の車両
(一) 原告車 普通乗用自動車(練馬三三あ一七六〇)(運転者、所有者・原告)
(二) 被告車 普通乗用自動車(練馬五六あ七〇三)(運転者・訴外金勝成、所有者・被告)
4 事故態様 原告車は、本件事故現場の交差点に進入し直進して抜けようとしたのに対し、原告車と対向して走行してきた被告車が交差点を右折しようとして衝突したもの(なお、事故の詳細については、後記のとおり当事者間に争いがある。)。
5 本件事故現場は、信号機により交通整理が行われていた交差点で、それぞれ片側四車線ないし五車線の中央分離帯のある広い道路が交差していた。原告車は日比谷方面から大蔵省上交差点方面へ向けて四つある車線のうち進行方向左から二つ目の車線を直進し、被告車は大蔵省上交差点方面から進行してきて本件事故現場の交差点を虎ノ門方面へ右折しようとしていた。
6 原告は自賠責から金二〇万円の支払を受けた。
7 被告練馬交通株式会社は、訴外金勝成を雇用しており、その事業の執行中に本件事故が発生したものである。
三 争点
1 本件事故の責任原因
(一) 原告の主張
本件事故現場において対面信号が青に変わったので、原告車は交差点に直進して進入したところ、強引に右折を行ってきた被告車に衝突してしまったものであり、事故の責任原因は専ら被告車にある。
(二) 被告の主張
本件事故現場において信号が黄に変わったので、被告車は右折を開始したが、交差点を直進してきた原告車に衝突されたものであって、事故の責任原因は主として原告車にある。
2 原告・被告の損害、特に被告の休車損害について
第三当裁判所の判断
一 本件事故の責任原因について
本件においては、原告・被告が交差点に進入した時点における信号表示が問題となる。この点について、原告本人は信号は青色表示にかわったので、交差点に進入したと述べている。また、本件事故現場の交差点において、原告の走行車線の左の車線(左から一つ目の車線)に他の自動車がいたことを原告自身も認めている。原告は、この車も、原告車と同様に青信号で発進をしたが、本件事故に巻込まれなかったのは、交差点を虎ノ門方面へ左折していったからだと主張している。しかしながら、甲第一二号証によれば、被告車は衝突によって反転しながら虎ノ門方面へ向い、最終的には虎ノ門方面に向かう道路のほぼ左から一つ目の車線上に停止したことが認められる。このような被告車に全く接触することなく虎ノ門方面に向かって左折することが、原告車と同時に発進した車に可能であったとは認定できず、すなわち、この車が被告車と衝突することがなかったのは、交差点に進入しなかったからであると推認できる。すなわち、本件事故現場の交差点の原告車進行方向の信号は青色であったとする原告本人の供述は採用できず、むしろ、この車が交差点に進入しなかったのは、信号が黄色であったからであると推認するのが自然である。
したがって、本件事故は被告が主張するように原告車は交差点で対面信号が黄色を示している時に直進進入し、被告車も黄信号で右折を開始したと認定でき、本件事故は、原告と被告との双方の過失によって生じたものというべきである。しかしながら、これによっても、原告と被告とは信号の点については対等であり、直進車である原告に一応の優先権(青信号の場合よりもかなり低いと考えられるが)があると考えられるので、その過失割合については原告対被告・四対六の割合とするのが相当である。
二 原告の損害
1 修理費 金七五万二八〇〇円(原告請求どおり)
甲第二号証により認める。
2 休車損害
金二一万三八七八円(原告請求金三九万七二二八円)
甲第三号証ないし第五号証により一日当たりの休業損害は金一万五二七七円と認められるが、休業期間については、新車納入日までは相当因果関係を認めることはできない。修理相当期間として二週間を休業期間と認める。
3 治療費 金四万〇七六〇円(原告請求どおり)
甲第六号証ないし第八号証により認める。
4 合計一〇〇万七四三八円のうち原告の過失割合(四割)に相当する部分を差し引くと金六〇万四四六三円となる。
5 弁護士費用については金六万〇四四六円が相当である。
三 被告(反訴原告)の損害
1 修理費 金七三万八九六八円(被告請求どおり)
乙第一号証により認める
2 休車損害 金八万円(原告請求額金五六万七二〇〇円)
休車損害については、修理期間を一〇日間、一台当たりの損害を金五万六七二〇円として請求している。確かに、被告の営業(タクシー会社)からして、ある程度の休車損害が発生したことは推認でき、原告も金八〇〇〇円から金一万三〇〇〇円の範囲内であれば、これを認めている。しかしながら、被告が、その主張する休車損害の額を立証するために提出してきた乙第一三号証ないし第一七号証は、被告が事故後に作成した報告書としての性格を有するものであり、休車損害の算定の客観的な資料としては十分でないといわざるを得ない。このような状況からすると、最低限として原告が発生を認めていると解される金八〇〇〇円をもって休車損害と認定するほかない。
3 合計金八一万八九六八円のうち被告の過失割合(六割)に相当する部分を差し引くと金三二万七五八七円となる。
4 弁護士費用は金三万二七五八円が相当である。
第四結語
よって、原告の請求は合計六六万四九〇九円から自賠責から支払われた金二〇万円を差し引いた金四六万四九〇九円及び平成八年三月九日から年五分の民法所定の割合の遅延損害金の支払いを求める限度で、被告の請求は金三六万〇三四五円及び平成八年三月九日から民法所定の年五分の割合によるの遅延損害金の支払いを求める限度でそれぞれ理由があるから、これらの限度で各請求を認容し、その余の請求は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用につき、民訴法六一条、六四条本文、仮執行の宣言につき同法二五九条一項に従い、主文のとおり判決する。
(裁判官 馬場純夫)